「…なあ、本当に行くの」 「行くって言ってるでしょ」 俺の住んでいる家の隣。玄関で引き留めた彼女。 ちらり、と彼女の格好に目を落とす。 白い膝丈のワンピース。染めたことのないサラサラの長い髪が、夏の風に攫われて揺れる。 少し伏せた目、白い頬に落ちる睫毛の影、強引に掴めば振り払われることなんて絶対にないであろう細い腕。わかっていて掴めないのはいつものこと。 ああ、苛々する。さっさと泣いて、傷付いて、俺が欲しいって縋ればいい。