「……そうだよな。エイミはそんなことしない。と、なると、やはり単純に俺が嫌だったとしか」
「あ~鬱陶しい! そりゃ、緊張とか恐怖とか、烏ちゃんにも色々あるでしょうよ。けど、そういうのを全部受け止めてやるのが夫の役目ってもんですよ」

 ジークははっとして、顔をあげた。まじまじとアルを見つめる。

「たしかに、その通りだ。アルは格好いいな。お前のような男が夫だったら、エイミも幸せだったろうに」

 自分のような未熟者が夫でいいのだろうかと、ジークはまた頭を抱えてしまった。

「……んじゃ、僕が烏ちゃんをもらってあげましょうか? いまからでも、彼女の部屋に言ってそう伝えますよ」

 アルがそう言って立ち上がると、ジークは必死の形相でアルを止めた。

「いや、ダメだ。エイミは譲れん。エイミは俺よりアルの方がいいかも知れんが……俺にはエイミしかいない。エイミじゃないとダメだ」

 なぜ、熱烈な愛の告白を自分が聞いてやらねばならないのだろうか。解せないと、アルは肩をすくめた。