「じゃ、なんですか? いびきがうるさいとか寝相が悪いとか?」
「違う! いや、まぁ、寝相とかは知らないが」

 アルはしびれを切らして、ドンとテーブルを叩いた。

「面倒くさい! はっきり言いましょう、はっきり」
「だからな……」

 ジークは言いにくそうに口をもごもごさせている。アルはずいと身を乗り出して、語気を強めた。

「は・や・く、言え!」

「だから、その、ずっと部屋にいられたら……手を出したくなるだろう」
「…………ん?」

 沈黙。ふたりの間を天使だか、妖精だかが通り過ぎて行った。

 アルは頭を抱えた。ジークのことだから、しょうもない理由だろうとは思っていたが予想の斜め上をいくしょうもなさだった。