ジークはグラスになみなみと酒を注ぐとアルに手渡した。彼はけろりとした顔で、それを飲み干した。

 テーブルを挟んで、ジークの対面にアルは腰をおろした。

「で、なんで烏ちゃん追い返したんですか? さすがに不憫で、この僕ですらちょっと心が痛みましたよ」

 新婚初夜に部屋から追い出される花嫁なんて、聞いたこともない。ジークのことだから、またしょうもない理由なのだろうと思いながらアルは聞いた。

「同じ部屋で一晩過ごすのは……ちょっときついものがある」

 ジークは両手で顔を覆って、天井を仰いだ。

 アルは「はて?」と、首を傾げた。ジークの言っていることがさっぱりわからない。

「えーと、あの黒髪はジーク様的にはありなんですよね? じゃ、身体が貧相だから?」

 ジークが答えないので、アルは続けた。

「まぁ同じ男として気持ちはよーくわかりますけどね。烏ちゃんは貧乏庶民暮らしだったわけで、こればっかりは言っても仕方のないことかと。もうちょい太れば、胸の方もマシになるかもしれませんし、数年後に期待ってことで……」
「違う! エイミは魅力的だ。魅力的だから困ってるんだ」

 アルの言葉に、ジークは大きく首を横に振った。