彼の青灰色の瞳が、静かな情熱をもって、エイミをとらえた。ジークの肩越しに見える大きなベッドが、急に存在感を増したような気がする。

(あれ? 結婚したということは今日から私もこの部屋で暮らすの? いやいや、先走り過ぎかな?)

 公爵家の夫婦関係の『普通』なんて、エイミにはわからなかった。

  わからないのなら、ジークに従うのみだ。

 彼女がそう覚悟を決めた瞬間、ジークがソファから立ちあがった。エイミは思わず、びくりと身体を震わせた。

「どうした? 大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です」

 エイミは彼の顔を見ずに答える。

  ジークは彼女に気づかれないよう、そっと小さく息を吐いた。

「もう部屋に下がっていいぞ」
「え?」

 弾かれたように顔をあげたエイミに、ジークは優しく笑いかける。

「朝からずっと忙しかったからな。ゆっくり休め」

(そうなのか……。うん、そうだよね。たしかに朝から色々忙しかったし、ジーク様だって疲れているはず……)