ハットオル家の敷地内にある小さな教会で、結婚式は滞りなく進められた。
エイミはガチガチに緊張していたが、ジークのエスコートで歩くか、彼と一緒に頷くか、エイミに求められる行動はその程度なので、なんとかなっていた。
結婚式も終盤にさしかかったところで、神父が「では、指輪の交換を」と口にした。
この国では結婚の約束に指輪を交換する習わしがあった。上流階級の結婚の場合、その家に代々伝わる宝石を指輪に仕立てて、交換するのが一般的だ。
庶民でも裕福な者は指輪を買ったりするそうだが、エイミの村にそんな金持ちはおらず、この儀式は省略されていた。
(え? 指輪? なんて……考えてもなかったけど……)
エイミは青ざめた。もしかして、とんでもない失敗をしてしまったのだろうか。
エイミの様子に気がついたジークが彼女の耳元に、唇を寄せた。
「用意してある、心配ない」
その言葉通り、神父の持つ木製のトレイの上には二つの揃いの指輪が載せられていた。銀のリングには細やかな彫りが施され、中央には大粒の黒い宝石、そのまわりを小さな透明の石がぐるりと囲むデザインだ。
ジークはエイミの手を取ると、指輪をそっとはめた。
「以前話した黒曜石という石だ。エイミの黒髪に似合うと思った」
エイミは自身の手元を、じっと見つめた。
(黒い色なんて大嫌いだと思ってたけど、こんなに美しい黒があるなんて……)
その黒い宝石はキラキラと光り輝き、信じられないほどに美しかった。宝石なんて知識も興味もなかったエイミですら、この輝きを、いつまでも見つめていたいと思うほどに。
エイミはガチガチに緊張していたが、ジークのエスコートで歩くか、彼と一緒に頷くか、エイミに求められる行動はその程度なので、なんとかなっていた。
結婚式も終盤にさしかかったところで、神父が「では、指輪の交換を」と口にした。
この国では結婚の約束に指輪を交換する習わしがあった。上流階級の結婚の場合、その家に代々伝わる宝石を指輪に仕立てて、交換するのが一般的だ。
庶民でも裕福な者は指輪を買ったりするそうだが、エイミの村にそんな金持ちはおらず、この儀式は省略されていた。
(え? 指輪? なんて……考えてもなかったけど……)
エイミは青ざめた。もしかして、とんでもない失敗をしてしまったのだろうか。
エイミの様子に気がついたジークが彼女の耳元に、唇を寄せた。
「用意してある、心配ない」
その言葉通り、神父の持つ木製のトレイの上には二つの揃いの指輪が載せられていた。銀のリングには細やかな彫りが施され、中央には大粒の黒い宝石、そのまわりを小さな透明の石がぐるりと囲むデザインだ。
ジークはエイミの手を取ると、指輪をそっとはめた。
「以前話した黒曜石という石だ。エイミの黒髪に似合うと思った」
エイミは自身の手元を、じっと見つめた。
(黒い色なんて大嫌いだと思ってたけど、こんなに美しい黒があるなんて……)
その黒い宝石はキラキラと光り輝き、信じられないほどに美しかった。宝石なんて知識も興味もなかったエイミですら、この輝きを、いつまでも見つめていたいと思うほどに。



