思い続けても叶わないことくらいゾーイだって、理解している。公爵夫人だから……とかではなく、エイミは夫となったあの男を愛しているのだ。村にいた頃はなにかを強く主張することなんて皆無だった彼女が、それだけははっきりと宣言したのだから。

「ゾーイのことは私が厳しく躾けて、一人前にしてあげるから。もうお姉ちゃんのことは忘れなよ」

 そう言ってふっと微笑んだ彼女は……やはり姉妹なのだろう。どことなくエイミに似ていた。

「うっ……どうしてもって言うなら……」
「なら?」
「お前じゃなくて、妹がいい……妹のがエイミに似てるし……」
「はあぁ~? 調子乗んな、馬鹿坊っちゃんが!」

 パァンという小気味よい音をたてて、ミアの平手がゾーイの頬を直撃した。

 それから一年後、なんやかんやでふたりは無事?に結婚。商才のあったミアが一家の大黒柱としてバリバリ稼ぎ、ゾーイは育児に奔走する毎日を送っていましたとさ。