(ゾーイ&ミア編)

「だからー、俺は誰とも結婚しないって言ってるだろ。エイミを思い続けて死ぬ覚悟だからな」

 我ながらかっこよく決まった。ゾーイはそう思ったが、目の前でミアはドン引きしている。
 「そろそろ身を固めろ」と村長である父親が勝手に決めた縁談相手は、エイミの妹のミアだった。

「……きもい。を通りこして、もはや怖い。そんな一方通行な愛を捧げられても、お姉ちゃんもドン引きだと思う」
「う、うるせぇ。俺の純愛を馬鹿にすんな」

 顔を真っ赤にして怒るゾーイを見ているミアの目は、呆れかえっていた。ミアは胸の前で腕を組み、はぁと小さくため息をつく。

「世話かけまくりの馬鹿息子だったんだから、親孝行と思って孫の顔くらい見せてあげなさいよ」
「うっ……」

 ぐうの音も出ない正論に、ゾーイは言葉をつまらせる。それでもミアは容赦なく続けた。

「いまやお姉ちゃんは公爵夫人よ。ひっそり思い続けるのだって、恐れ多い、雲の上の人になっちゃったんだから」
「それは……わかってるよ」