「なんの用だ?」
「誕生日……私、もうすぐ誕生日なの!」
「あぁ。来月だろ?」
「覚えててくれたの?」

 リーズの声は嬉しさに弾んだ。が、どうやらぬか喜びだったようだ。

「少し前にトマス爺と烏ちゃんが誕生日パーティーの相談をしてたからね」

 リーズはむぅと唇を尖らせた。たとえそれで思い出したのだとしても、言わなくていことじゃないか。

「もうっ。アルは本当に気が利かなないんだから。そこはもちろんだよ、ハニーとでも言ってくれればいいのに」
「気が効かなくて悪かったね。で、誕生日がなんなんだ? なにか欲しいの?」

 色気もなにもあったものじゃない。だが、これがアルなのだ。もはやリーズもそこには期待していない。

「デート! プレゼントはいらないから、誕生日くらいデートしてよ」
「……わかった。街にでも連れて行けばいいのか?」
「うん! 街でも湖でも森でも、ふたりならどこでもいいわ。約束よ、絶対だからね」

 強引に取りつけたデートの約束だったが、それでもリーズは嬉しかった。
 アルはノーとは言わなかった。それだけで十分だ。

 リーズはアルの後ろにまわりこむと、座っている彼の背中にぎゅーと力強く抱きついた。