「あ。けどさ、俺、貴族のしきたり? とかなんも知らねぇし、今のままじゃ継がせらんないって言われちゃった」
「へ?」
「だからさ、ジーク様に教育してもらってこいって。なんとか伯爵家には、一人前になってから来いってさ。だから、まだしばらくは……世話になっていいかな?」
「……いいに決まってるじゃないか」

 涙をこらえるのを諦めたジークの顔は、ぐしゃぐしゃだった。ぐしゃぐしゃの顔でジークが嬉しそうに笑う。

(うん。やっぱり、私の一番の幸せはジーク様の笑顔を見ることだわ)

 エイミはそう思った。これからもずっと、一番近くで彼の笑顔を見ていたい。そして、ここにいるみんなと眩しいほどに輝く未来を紡いでいくのだ。
 
 これ以上の幸せがあるだろうか。

 (私の人生、ついてなくなんかなかった。不幸なんかじゃなかった! むしろ、世界中の誰よりも幸運だったんだわ)