翌日。ナットはひとりでお祖父さんに会いに行った。

「おかえり、ナット」

 帰宅したナットを全員で出迎える。

 トマス爺のこしらえたご馳走を食べながら、ナットの出した結論を聞くことにした。

「まず……」

 沈黙をやぶって、ナットが話し出した。

「祖父さんと俺、全然似てないじゃないか! 俺はあんなにしわくちゃじゃないぞ」
「歳が違うから、それは当たり前じゃあ」

 エイミが言うが、ナットは首を振った。

「いや、俺のほうが断然整った顔をしてる。けどさ……俺を見たときの祖父さんの泣き笑いみたいな顔が、びっくりするほど母さんに似てた」

 ナットの目にうっすらと涙が滲んだ。それを拭いながらナットは立ち上がると、ジークのほうに身体を向けた。ぴんと姿勢を正したナットは、驚くほど大人びて見えた。

「ジーク様。俺、継ぐことにしたよ、なんとか伯爵家」 
「……そうか。しっかりな」

 ジークの目からも涙が溢れた。ジークだけではない、エイミもアルも、みんなも同じだ。ナットとの別れを覚悟したから。