ゾーイは新品の無駄にきらびやかな洋服に身を包み、自慢の赤毛も綺麗に整えてあった。肌ツヤもよく、なんなら少し太ったくらいに見える。とても、一生懸命勉強をしてきたようには思えないが、そんなことはみんなわかっているから何も言いやしない。

「お帰り、ゾーイ。楽しかった?」
「今回のお土産は~?」

 求められているのはお土産のほうなのだが、ゾーイはもったいぶった口調で遊学の成果を語り始めた。

「うんうん、今回の遊学は実にためになった。俺ももう二十歳、立派な大人だ。そこでだな」
「へ~、すごいね」
「さすがゾーイ」

 みんなはお土産の入った麻袋を漁るのに夢中で、気のない適当な相槌を返すばかりだ。
 だが、そんなことを気にするゾーイではない。というか、お馬鹿なので空気を察したりはできないのだ。