それから理玖先輩はひたすら、私に数学を教えてくれた。
私のわかんないとこを、基本的なところから徹底的に。
「おーい、もう閉店時間ですよー」
そんなマスターからの声がかかるまで、私たちはひたすら数学だけをやり続けた。
「えっ…!?
も、もうそんな時間!?」
時計を見れば、もう時間は19時を過ぎていた。
「ごめんなさい、こんな遅くまで…」
「いやいや、俺は大丈夫だけどね。
マスターすみません、一杯で長居してしまいまして」
「いや俺もいいんだけどさ
もう遅いんだから優奈ちゃんのこと、ちゃんと送ってけよー」
え、えぇ!?
「はい、もちろん」
えっ…!?
い、今なんと…!?
「行こっか、優奈ちゃん」
「へ…、あぁ!はい!」
私は急いで荷物をカバンに詰め込み、その間に先輩は私の分のお金まで払ってくれていた。
「せ、先輩すみません…
こんな時間まで付き合わせておいて、お金…」
「全然いいよ。この前のお礼」
い、いや…あれは私がお礼におごったんだけどな…
「あの、じゃあおやすみなさい」
「え?家まで送るって」
「でもそれじゃ先輩が遅くなっちゃうので…」
「いいよ、まだ7時でしょ。
俺はいいけど、女の子が1人は危ないでしょ?
また前みたいに絡まれるかもしれないしね。
ね、送るよ」
「…ありがとうございます」


