「先輩」
「……え?」
ボーっと、空いたグラスを見ていたら、それを片づけに来た優奈ちゃんが、俺に話しかけてくれた。
「また、大人しく待つんですか?」
「……うん、そうだね」
「本当にそれでいいんですか?寂しくないんですか?」
…寂しい、か
もう、そんな感覚は鈍って全然感じないよ。
いつも通りの日常に戻るだけ。
違うことといえば、優奈ちゃんが俺に冷たくなっただけ。
それだけだよ。
「…せめて、見送りだけでも行けばいいのに」
「え?」
「しばらく戻ってこないのに彼氏が見送りにも来てくれないなんて、彼女さん寂しいでしょうね」
優奈ちゃんはそういってテーブルを拭いて、カウンターへと戻っていった。
「……もう今更だよ。
見送りだって、駅に向かったのかバスに向かったのか、それとも家に戻ったのか
俺にはわからないし」
…本当、とことん俺はなにも紫那のことを知らない。
そもそも告白した時だって、俺は紫那のことをなにも知らなかったし、紫那も俺のことはほとんど知らないと思うし…
……なんか、そう考えたら俺と紫那って付き合ってるって言えるのかな…
ただここで30分程度話すだけで、俺は紫那の彼氏って言えんのかな


