16歳、夏。
「あっつー…」
「あ、優奈ちゃんこんにちは」
「こんにちは、マスター。
今日も暑いよー」
「はは、夏休みももうすぐ終わりだね」
「その前に登校日もあるからね!」
私は、このちょっと昔ながらのお店でアルバイトを始めました。
学校からわりと近くて、他のカフェみたいにオシャレでオープンで…ってわけじゃないけど、いい意味で古びたこの喫茶店。
従業員はオーナーでもあるマスターと、アルバイトの2人だけ。
まぁたまにオーナーの奥さんの美里さんも手伝ってるけど、基本的にはマスターと私だけ。
そこまですごく混むわけじゃないんだけど、夕方どうしてもマスターがお店を抜けなきゃいけない時間があり、バイト募集をしたら私が来たみたい。
だから時給がいいわけでもないけど、ちょっとしたお小遣い稼ぎにはちょうどよかった。他のところ見たいにがっつりシフトに入れられるわけでもなくて。
特に制服があるわけでもなく、私は私服にエプロンをかけただけ。
学校が始まったら制服にエプロンでいいみたいな、そんなゆるいお店だった。