昼休みの 交替で 窓口に座った私。


入行して 半年が過ぎて 

仕事にも だいぶ慣れてきた。


隣の窓口で お客さんの 怒鳴り声が聞こえ 私は 顔を上げる。


「大変 申し訳ありません。規則なので ご協力をお願い致します。」

先輩が 言いながら 頭を下げている。

「規則、規則って。自分のお金を出すのに。何で 文句言われなきゃ いけないのよ。だいたい そんな規則 いつ決まったの?ちゃんと 公表してくれなきゃ わかんないでしょう。」

初老の女性は カウンターに 乗りそうな勢いで 詰め寄っている。

「運転免許証を お持ちでなければ マイナンバーカードか パスポートを 確認させていただくことになっておりまして…」


ちょうど 昼休みで 少ない行員。

課長を 呼びに行きたいけれど 私は 席を外せなくて。

『誰か いないかなぁ…』

後ろを振り返り キョロキョロしていた。


対応している先輩も 困った顔で 私を チラッと見る。


振り向いた私の視界に 中井さんの姿を 捉えた時


「この人が言ったのよ。去年 お金下した時。大丈夫って 言ったのよ。」

お客さんは 私を 指差して言う。


「お客様。何か 不都合が ございましたか?こちらで お伺いいたします。」

中井さんは すっと 窓口に近付いて

そのお客さんを 奥の個室に 連れて行った。


「完全な 八つ当たりだね。」

「私 去年 いなかったし。」


私と先輩は 小さく笑顔を交わし 業務を続けた。