夏休みが開けて一発目の学校。


始業式が終わったあとのホームルームで、先生が席替えを提案した。決め方はくじ引き。妥当だし平等だ。先生はなにひとつ悪くなかった。




「今度は浅岡さんが隣かぁ。ラッキー」

「志葉が良かった」

「素直すぎるね」

「…あれ、佐々木くんだっけ。鈴木くん?」

「花畑(はなばたけ)。全然かすってもないね、俺苗字結構珍しいのに」

「あー、そうだったそうだった。おはなばたけくん、ね」

「すごい能天気なやつみたいになるから「お」つけるのはやめてくれるかな、うん」



私の隣の席は花畑くんという人だった。まともに話したことなんてないのに、何を思って「ラッキー」と言ったのだろう、とそんなことを考える。



「浅岡さんって志葉にしか興味無いの?」

「そんなことは無いけど。少なくともお花畑くんには興味は無いかなぁ」

「うわー、傷つく。俺結構有名なのにー」




有名?お花畑くんが?


そうか、この人頭の中までお花畑なんだ……とそんなことを思ったものの、風の噂で『花畑は遊び人』みたいな情報を聞いたことがあったことを思い出した。

あんまり詳しくは覚えていないけれど、多分不特定多数の女の子が好きな人なんだ、お花畑くんは。


お花畑くんの事情なんて全然興味湧かない。
あーあ、本当に志葉の隣が良かったのにな。



……そういえば、志葉の隣は誰になったんだろう。