「冗談だよ、ごめんって」
「浅岡は本気でバカなんだって今思った」
ちょっと本気だったんだけど、とその言葉は呑み込んで「サイテー」と言ってへらりと笑ってみせる。
志葉が私を好きになった本当のきっかけはなんだろう。
好きなところ100個言ってもらったら判明するかと思ったけれど、どうやらそれは無理そうだ。
ありったけの記憶を遡り、空っぽの脳みそをフル回転させて自分の良さを考える。
明るいところ?
…違うなぁ。別に私は特別暗い性格じゃないだけで、明るいわけではないし。
何でもかんでも適当なところ?
…うーん。むしろ志葉は適当な人間嫌いそうなんだけどな。
となるとやっぱり私がバカで変人なところを好きになってくれたのだろうか。
'変人で何もかも適当で黙ってれば可愛い'浅岡ゆらのを好きになるのって相当な物好きだなぁ。
「浅岡」
不意に名前を呼ばれ、「ん」と短く返事をする。
志葉に苗字で呼ばれるのは、結構好きだ。
「その顔 好き」
「…ん?」
「あ、その顔も好き」
「え?」
「バカなとこも可愛いとこも好きだよ」
「…な、んの話してんの、志葉」
「好きなところの話」



