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「俺からしたらばからしいけど、…智咲がそういうならそうなのかなって思います」



羽瀬くんがはぁ、と息を吐いた。それは呆れというより諦めのように見えた。
彼が諦めたものは、多分、私だ。




「ホント、ここまでバカだとは思ってませんでした」

「ええ、悪口」

「ていうかさっさとペン動かしたらどうですか留年先輩」

「いやその呼び方やめてください」



どっちが年上なのかもはやわからない。厳しすぎる。

とはいえ甘えたことを言ってられる立場ではないのも分かっている。


羽瀬くんから聞いた知らなかった事実に頬を緩ませながらも、大人しく言うことを聞いて再びペンを動かす────と。




「俺、バカな人は嫌いだけど、」

「え」

「智咲の彼女は、嫌いじゃないです」

「え」

「…ペンの持ち方だけは、まじ綺麗ですね」