感謝はしている。けれど、どうも彼は私のように頭の悪い人は嫌いみたいだ。ひしひしと伝わる。
「ホント、…智咲がこんなバカな女を選んだの意味わかんなすぎる」
わざと聴こえるぎりぎりの声量で言ったのか、それとも私の聴覚が優れているせいなのか。
彼にとっての不可解は、頭が良い志葉智咲の彼女が こんなにもバカな女だったということなのだろう。
「あー……えっと、では、私はかえります」
「あら、大丈夫なの?」
「羽瀬くんに教えて貰ったので。…ホント、ありがとう羽瀬くん」
「…いえ」
「じゃあ、失礼しました」
先生と羽瀬くんにそう言って英語科準備室を出る。温められていた室内とは打ってかわりひんやりとした廊下は、彼のことを冷静に分析するにはちょうど良い温度だ。
羽瀬京也。
良い奴なのか嫌な奴なのかわからなかった。
見下されていたのもわかる。私が志葉の彼女であることをよく思っていないのも分かる。
けれど、嫌いなやつにあんなふうに解説までつけて教えてくれる人って一般的に居るものなのだろうか。



