わかりきったことだけを、







先生がそういうなら、と、「失礼します」と言って彼の隣に座る。椅子を引いた時にたまたま見えた彼の上履きは一年生を指す青のラインが入っていた。



……年下だったのか。


もともと同じ学年の人ですら把握しきれていないから、実は同級生かなと思ったりもしたけれど、1年生となれば確実に会ったことはない。



「…あ。浅岡です」



自己紹介がいるかと言われれば多分要らなかったと思う。けれど、大人しそうな、落ち着いた雰囲気をまとう年下の彼は、ふっと小さく笑うと「羽瀬(はせ)です」と名乗った。



羽瀬くん。

多分もう話す機会はないとは思うけど、せっかく自己紹介してもらったし記憶に収めておこう。

…そう、思っていたんだけど。





「浅岡先輩ってあなただったんですね」

「はい?」

「俺、志葉智咲のいとこです」

「ああ、はい…って、はい?」

「いとこ」

「いとこ…」

「羽瀬 京也(はせ きょうや)です。一回会ってみたかったのでラッキーでしたね」