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「っ、おい弥生」
懐かしい過去を思い出しているとそんな声が聞こえ、あたしは現実の世界に引き戻された。
パッと顔を上げるとそこには息を切らした洸太がいて、それだけでなんだか泣きそうになってしまった。
「なにしてんの、まじで」
「…迷子になってました」
「バカかよ」
「……洸太、が、来てくれると思ってなかった」
「はあ?なめんな、俺はこの遊園地のマニアだぞ。滝に白い壁にポップコーンなんて十分すぎる情報だわ」
「そ、か。ありがとう…」
2人きりで話すのは随分と久しぶりだ。
完全に距離を置いていたわけではないけれど、それでも過去には戻れないわけで、あたしはあくまでもクラスメイトとして彼と話すことしかできなかったのだ。
本当は口が悪いんだよ、洸太って。
あんな優しい喋り方じゃないんだよ。
あたしと洸太は遊び人。
それでずっとやってきた。優しさに本音を隠して、もめごとをなるべく避けて、もう2年も経ってしまった。
――だけど、だけどね、洸太。
「…洸太」
「…なに?」
「…もう、あたし平気だから、」
「は?」
「…前の洸太の方がいいよ……」
きみの嘘は、もう十分だから。
きみの優しさは嘘偽りのない誠実なものであってほしいって、ずっと思ってるんだよ。



