兄上は秀衡さんに状況を説明し、匿ってもらえることになり、平泉での暮らしが始まりました。

「兄上……兄上は、何故頼朝さんから追われているのです?」

ある日、書物を読んでいる兄上に思い切って問いかけます。兄上は、少し困った表情を見せた後、口を開きました。

「これも、すべて兄上の許可を得ずに行動した私が悪いのだ……」

パタン、と書物を閉じて、兄上は切なそうに笑います。

「……なぜ兄上に許可を取る必要があるのですか?兄上の今までやって来たことは、悪いことではないのです!なのに……なぜ兄上は殺されないといけないのですか……?」

涙が溢れては、止まりません。

「……お主は、変わったやつだな」

兄上は、そう言いながら僕の頭を撫でました。その温もりに、ますます涙は止まらなくなります。

耐え切れなくなって、僕は泣き崩れました。



「いたぞ!殺せ!射抜け!!」

僕と兄上は、頼朝さんの家来から逃げるように近くにあった建物に飛び込みます。秀衡さんが亡くなり、僕たちの居場所が頼朝さんにバレてしまいました。

「……良輝。お前だけでも逃げろ」

真っ直ぐに兄上は、僕を見つめます。

「……放て!!」

建物の外から誰かの声が聞こえてきますが、僕は無視して兄上を見つめました。