「もしかして……兄上、ですか?」

「あぁ、そうだ。白若は、大きくなっても顔は変わらんのだな。そのおかげで、分かったぞ」

兄上は、そう言って微笑みました。その笑顔は、兄上が寺に預けられる前に見続けた笑顔と変わりません。

「あぁ、兄上……会いたかった……」

僕は、兄上に抱きつきます。兄上は、驚きもせずに「私も会いたかったぞ!」と僕を抱き締めてくれました。

「白若。お主は、元服したのか?もう15歳だろ?」

僕を放し、兄上は僕をじっと見つめます。

「まだしてないです」

「……なら、しよう。着いてこい」

そう言って、兄上は僕を連れて陣地まで行きました。そこで、兄上に髪を結われ、烏帽子を被されます。

「今日より、白若改め源 良輝(よしてる)と名乗れ」

「はい!」

「良輝、早速だが初陣だ!目指すは、壇ノ浦!」

兄上の言葉に、僕は深く頷きました。



「早くお逃げください!義経様、良輝様!!」

壇ノ浦で平氏を滅ぼした僕らは、今兄上である頼朝さんに追われています。理由は、僕には良く分かりません。

ただ頼朝さんの家臣に襲われる日々です。馬を全力で走らせて、何とか平泉まで辿り着きました。