虹くんの微かに震えた声が薄闇の中に溶けていく。
何度、傷ついてきたのだろう。
本当の自分を知ってほしくて、幼い頃から何度も声をあげてきたのだろう。
その度に蔑まれ、苦しさしか残らなかった虹くんは、どれだけ涙を流してきただろう。
心無い言葉が飛び交う世の中。
イジメの消えない真っ暗な世界。
いつか終わりが来るとか、大人になれば笑えるようになるとか誰かが言っていたけど。
苦しいのは自分だけじゃないと言い聞かせても、逃げる以外の術が私達にはわからなくて。
「だからお前も、ミッションが終わったら早く俺から離れた方が──」
悲しい言葉を遮るように、虹くんの手に触れて、表情を隠し続けるその手を降ろす。
「深恵くんも虹くんも、間違ってるよ?」
「……間違ってる?」
うん、と虹くんを見つめて頷くと、涙が零れてしまいそうだった。



