「それに俺、あんたが昨日エスポワールの裏口で虹と抱き合ってんの見てんだよね」
そこまで見られていたのか……。
「虹のテリトリーに入れたからって、何でも探っていいわけないだろ?」
「違うよ……っ、 私は、虹くんが心配だったから!」
探ってるなんて言い方は侵害だ。
「はっ。お前に何がわかんの?」
私に顔を寄せた深恵くんは冷たい笑みを浮かべた。
「虹が背負ってるもん、お前に降ろせるわけがないだろ」
棘のある声に、私はスカートの裾を握りしめた。
虹くんが背負っているものを、私はまだ知らない。
降ろせるとも、一緒に背負うとも、そんな大層なことだって言えない。
……それでも、
「……わからないよ。わからないことばかりだよ!それでも虹くんを知りたいよ!深恵くん言ってたじゃん……私に、正面からぶつかれって。それで昨日……虹くんが心配で、消えちゃいそうで、抱きしめたくなったんだよ!」



