「虹くん──、」
私は虹くんのその手を握った。
一瞬、虹くんの瞳が驚きに満ちていた。
「虹くんが、泣いてる気がしたから……っ」
夏だというのに心配になるほど冷たい手。
「泣くわけないだろ。お前じゃないんだから」
心配すんな……と。
無理に表情を和らげようとする虹くんに、私はもう我慢出来そうもない。
「強がらなくていいんだよ……虹くんだって、苦しいなら苦しいって言っていい」
私に弱音を吐かせてくれたように。
心を重くする理由があるのなら、私は少しでもそれをほどいてあげたい。
「だから、お前が心配することじゃ……」
虹くんの言葉を遮るように、身体が勝手に動いた。



