肩で呼吸を繰り返して、恐る恐る距離を縮める。
こんな時、なんて言ったらいいかわからない。
口を閉ざしては何か伝えようとしていた私に、
「悪い……俺がいないと、お前部屋に帰れねぇのに」
……と。
先に口を開いて悲しく笑った虹くんの姿に、喉の奥が熱くなった。
「……ごめんな? 母親とせっかく会えたのに先に帰って」
「ううん……っ」
こんな時でさえも虹くんは自分のことよりも相手のことを優先する。
「……なんでお前がそんな顔するんだよ」
溜め息混じりに零した虹くんの瞳が儚く揺れた。
そして、輪郭をなぞるようにそっと私の頬に手を伸ばす。



