「その男の子だってムッてしてたのに、人に下手くそとか言うから」



虹くんが目を見張った気がする。


そのことを思い出しちゃって、私の強張った力が抜けていく。


虹くんの澄んだ瞳と目が合えば、胸の奥の柔らかい部分が温かくなって、自然と笑みがこぼれた。



「俺はこっちの方が好き」



……えっ?


好き……だなんて、思いもよらない言葉だった。


虹くんに見つめられて、トクンッと高鳴った胸の鼓動が大きくなっていく。



「す、好き……って。それはあの、どういった意味で……好きにも種類があるというか!」


「なんでもねぇ……」



虹くんの表情はすぐにいつも通りツンとしたものへと戻った。


だから、今度は私が手を伸ばして、ぷにっと虹くんの頬をつまんだ。



「……おい。なんの真似?」


「……もちろん虹くんにも仕返し!」



やば……眉間にシワが寄っている。

さすがにこれはマズかったかも……。