「……どうした? 寝れない?」



くるっとこちらに身体を向けてくる虹くんとの距離が一気に近づく。



「っ、う、ううん……あの、聞いてもいい?」


「なに?」


「私、虹くんのこと困らせてるかな……」


「聞きたいことってそれ? 別に困ってない」


「虹くんはそう言ってくれるけど、今日みたいに迷惑かけてばかりじゃ、虹くんに嫌われちゃうかなって……」



自分でもこんな発言をしてることにビックリだ。


虹くんは静かに息を吐くと、枕の上に肘を乗せた。



「困らせたくないって思うなら、もういい子で寝てくれる?」


「……っ、」



てっきり呆れられるかと思ったけど、虹くんが微笑んだ気がした。



「ん……ありがと、虹くん。おやすみなさい」



真っ暗だけど、虹くんの隣は安心する。


そう思ったら、私はあっという間に夢の中へと溶けていった。



「──お前にしては頑張ったんじゃない?」



夢の中で、誰かが私の頭を優しく撫でてくれる。



「……秒で寝てるし」



──私は、この手の温もりを、知ってる気がした。