【愛奈side】

佐知子が学校に来なくなってから1週間が経った。

クラス中、いや、この町の大人たちの間にもSNSで拡散されたことにより佐知子の父親の醜態は知れ渡ることになった。

痴漢行為を繰り返している中年男性がいるとの情報が警察にあり、内偵捜査をしていたところにまんまと現れた佐知子の父親が行為に及び現行犯逮捕された。

そして、佐知子は母親への暴力を理由に児童相談所に一時的に保護されたと噂になっていた。

2、3日は大騒ぎになっていたクラス内も1週間も経てば佐知子のことなど誰も口にしなくなり何事もなかったかのような日々に戻った。

佐知子がいなくなると、香織と杏奈はわたしをイジメることはなくなった。

元々ファッションや恋バナの大好きだった二人は佐知子がいなくなり清々したかのように毎日楽しそうにSNSや雑誌を読み漁りお洒落に勤しんでいる。

必死になってあの二人に媚びを売り、共に行動しようとしていた佐知子の存在は二人にとってその程度だったのだろう。

「どう?佐知子ちゃんへのイジメ返しに成功した気分は」

放課後、誰もいない教室の中でぼんやりと佐知子のいた席を眺めていると急に声をかけられた。

「エマちゃん……!ホントに色々ありがとう!まさか本当にイジメ返しに成功するなんて思ってなかったよ」

教室に入ってきたエマちゃんはあたしの前の席に腰かけてにっこりと笑った。

「うん。佐知子ちゃんもこれで反省してくれるといいけど」

「どうだろう。正直、佐知子のことはもうどうだっていいの。次は志穂ちゃんでしょ?志穂ちゃんにはどうやってやり返す?」

イジメ返しなど成功するはずがないと思っていたからこそ、佐知子へのイジメ返しが成功したことでそれが弾みになった。

もしかしたら次のイジメ返しも成功するかもしれない、いや、必ず成功させて見せるという気持ちになる。