「人が見たら、マフィアと今にもマフィアに売り飛ばされそうな小娘に見えるでしょうに。
銀次さん、お嬢には弱いんですね」
お嬢とか呼ぶわりに、小娘とか言ってますよ、この人……と思ったが、雪丸は、
「もうすぐ社長が来られるんですよね。
何時間くらいでたどり着けますかねー?」
と楽しそうだ。
いや、その人は濡れ衣とはいえ、貴方が一年間付け狙ってた人のばすですが……。
だが、雪丸は今の生活が新鮮で楽しいらしく、もう昔のことは気にしていないようだった。
そのとき、
「何時間もかかってないぞ」
と庭先で声がした。
見ると、あの罠をかいくぐって来たわりに、スーツの何処も汚れていない有生が立っていた。
周囲を見回し、
「玄関は何処だ」
と此処まで来ておいて、今更なことを言う。



