「ちょっと早めに着くかもしれない」
そんな余裕のLINEが有生から来た土曜日の朝。
夏菜が屋敷の廊下でそれを読んで笑っていると、
「なんですか?」
と山で見張ることを止められた銀次がそれに気づいて言ってくる。
「あっ、あの小僧からのLINEですね。
男女でLINEを交換するなんて、付き合ってるのと同じですよ、お嬢っ」
……銀次さん、と苦笑いしながら、夏菜は、
「仕事用ですよ」
と教えたあとで、
「そういえば、私、銀次さんのLINE知りません。
交換しますか?」
と訊いてみた。
すると、銀次は真っ赤になり、飛んで逃げる。
「そっ、そんなっ、私ごときがお嬢とLINEの交換とかっ。
滅相もないっ」
とんでもないですっ、と言っていなくなってしまった。
「面白いですね~、銀次さん」
と後ろから現れた雪丸が笑って言う。



