「へー、社長が来られるんですか、明日」
家に帰ると、雪丸が薪で風呂を焚いていたので、なんとなく側にしゃがみ、木がパチパチと爆ぜる音を聞きながら話す。
いい匂いだ。
木が燃える匂い。
社長が木の香りには魔除けの力があると言っていたが、わかる気がする。
なにかリラックスできるしな、と思いながら、もっと匂いと音を感じようと夏菜が目を閉じると、
「でも、社長が数々の罠をくぐり抜け、お嬢を迎えに来るなんて、まるで魔王の城に助けに来る王子様みたいですね」
と雪丸が笑う。
いや、貴方までお嬢はやめてください……。
銀次さんの口調が移っている、と思ったとき、背後からその銀次の声がした。
「どっちかと言うと、魔王が攻めてくる感じじゃないですかね?」
さっきまで薪でも割っていたのか、銀次は肩に斧を担いでいる。



