夏菜が去ったあと、去らなかった指月が有生に向かって言う。
「藤原は結構服持ってそうですからね。
今のところ、毎日違う可愛い服着てきてますしね」
「……お前でも可愛い服とか思うのか」
「思いますよ。
藤原は自分をよく知ってると思います。
派手になりすぎない程度に主張のある可愛い服をいつもさらりと着てるので、センスがいいんだろうなと思います」
チラと指月を見上げると、
「ああ、私は彼女に好意は抱いていません」
と訊いてもいないのに言われた。
「何故だ」
と思わず言ってしまい、訊き返される。
「何故だ?
いや、貴方の好みが世間一般の基準じゃないですから。
ちなみに、私が藤原を好きになれない原因は、恐怖です」
「……恐怖?」
らしくもない言葉、というか、恋愛話には相応しくない言葉に思わず訊き返していた。



