今夜、あなたに復讐します

 

 いい香り。

 ほのかな感じで、それでいて印象に残る。

 社長もいいとこあるんだなー。

 今度なにかお返ししなくちゃと思いながら、日々、デスクの上に置いておいたお香の匂い袋を眺めつつ仕事をしていた夏菜だったが、金曜日、有生《ゆうせい》に呼ばれた。

「明日、例のパーティだから。
 朝、迎えに行こうかと思うんだが」

「大丈夫ですよ、社長。
 第一、うち、車入れませんし」

「入れませんねえ」
と後ろにいた指月が言う。

「うちの家、山越えないと来られないようになってるんで、防犯と入門希望者を試すために」

「……いやそれ、一般の客も試してるよな」

「私、会社まで出てきますよ」
と言ったのだが、

「いや、迎えに行く」
と有生は言い張る。