……ああ、怖かった。

 銀次は離れた位置から有生たちのいる車両を窺いながら思う。

 あれがお嬢を祟り殺すとかいう、向こうの七代目か。

 坊っちゃん育ちのボンクラかと思っていたのに。

 気を抜いたら、食い殺されそうな気配を発していた。

 後から戻ってきたあの秘書も怖い。

 ほとんどの人が寝ているグリーン車で、あの二人だけが起きてる猛獣というか。

 あそこだけサファリパークみたいだ。

 お嬢は、あの男を見張るためなのか知らないが、今日もいそいそ朝も早くから仕事に行かれたが。

 そんな会社で働いたりして大丈夫なんだろうか。

 銀次の頭の中では、可憐な夏菜が二頭の猛獣の餌食になっていた。

 指月がいたら、
「いや、襲いかかったら、こっちが食われますから」
と言うところだっただろうが。