「あの……藤原は下手したら、私より強いですからね。
 見た目はあんな風ですが」
と頭の中を読んだように指月が言ってくる。

「社長がボディガードの心配してどうすんですか」

「別にあいつの心配なんてしていない。
 今のマフィアみたいな奴を見て、会社が心配になっただけだ」

 そう言い返したあとで、ふと有生は呟いた。

「今の男、まるで、マフィアみたいだったのにな。

 何故だろうな。
 真横に立たれたとき、子どもの頃、親戚のうちでやったゲームのスリの銀次って奴を思い出したよ。

 新幹線だからかな」

 スリの銀次は新幹線でいきなり金をスッてくるからだ。

 指月も意外にも同じゲームをやったことがあるらしく、ああ、と言って笑っていた。