「い、いやいや、そうじゃなくてですねっ。
 私は貴方に復讐に来たんですよっ」

指月(しづき)
と有生は戻ってきたさっきのイケメン秘書を――

 いや、秘書なのかは知らないが、呼んでいた。

「ちょっとこいつの面倒を見てやってくれ」
と言って、さっさとエレベーターに乗っていってしまう。

 やたら目力のある有生の視線から解放され、夏菜は、ふう、と息をついた。

 無性に喉が乾いているのは、初めて間近で見た有生のイケメンっぷりに当てられたからでは決してない。

 コンビニから疾走したせいだな、きっと、と思いながら、指月を見上げる。

 指月もまた無言で夏菜を見下ろしてきた。

「……あの、ちょっと飲んでもいいですか?」

 そう断ってから、夏菜は今、有生を撲殺しようとしたペットボトルを開け、一気に飲んで、ふう、と息をつく。

 緊張で冷たさも気にならなかったので、強く握っていたフローズンなジュースはもうかなり溶けていた。