夏菜が逃げ去ったあと、横にいた指月が有生に言ってくる。 「……社長も藤原の道場に入門しますか? お風呂入ってる藤原に、窓の外から湯加減訊けるかもしれませんよ」 「何故、この俺がっ。 莫迦じゃないのかっ」 もう出るからなっ、とデスクの上の鞄をつかんだ。 「はいはい」 と不遜(ふそん)な秘書は適当な返事をし、見送りについてくる。