今夜、あなたに復讐します

「ほんとうに落ち込んでる人がハワイに行きますかね?
 あそこ、幸せそうなカップルでいっぱいですよ」
と指月が言うと、

「今、別居してる妻のところにいる、うちの娘もそんなでしたよ。
 彼氏にフラれたあと、もう体重制限はしないとか言って、友だちと食べ歩いたり、旅行に行ったりしてましたが」
と上林も言う。

「おい、シスコン」
有生(ゆうせい)が男を呼んだ。

 振り向くな、青年……。

「お前の姉貴をだました奴の詳しい話を聞かせろ」
と有生が言うと、男は身振り手振りを加え、(せき)を切ったように話し出す。

「……なるほど、わかった」
と言った有生はデスクを振り向き、メモすると、男に渡した。

「たぶん、そいつだ。
 行ってこい。

 よく俺の名前を語って女を引っ掛ける俺の大学時代の友人だ」

 ありがとうございますっ、と男はメモを手に出て行った。

 ぱたん、と閉まった扉を見ながら夏菜は訊く。

「いいんですか? ご友人殺されちゃいますよ」

「大丈夫だ。
 簡単に死ぬようなタマじゃない」
と言いながら、有生は何処かにスマホで電話していた。