今夜、あなたに復讐します

 夏菜の下敷きになっているのは、あの日殺しに来た若者だった。

 おやおや、とその顔を確認して、指月が言う。

「殺しに戻ってきたやつ始めてじゃないですか?
 だいたい、一回やったらスッキリするから。

 大抵の場合、八つ当たりですしね」

「……捕まったあと、二度とやる気がおきないように、お前がこんこんと説教してるしな」

 地下の狭い密室とかで、指月とふたりきりになり、正座させられ、過去のすべてまで洗いざらい調べられ、問題点を指摘され、二度と殺しに来る気がおきなくなるまで、説教されるおのれの姿が浮かんだ。

 ……生き地獄だ。

「いやいや、お前の洗礼を受けても、戻って来た奴いるじゃないか。
 三顧の礼で雇ってやった」

 三回めげずに殺しにきたらしい。

「誰なんですか?」

「ドライバーの黒木だ」

「……危険じゃないですか」
とあの四角い顔で無口な運転手を思い出しながら、夏菜は言った。