「失礼します」
と言って、ノックのあと夏菜が社長室に入ると、何故か有生(ゆうせい)は少しホッとしたような顔をしていた。

 ツカツカとそのデスクまで行き、
「社長、殺しに来ました」
と言うと、有生は読んでいた書類から目を上げ、

「……ペットボトルで、ポコリじゃなかったのか」
と訊いてくる。

「いいえ。
 今度はペットボトルごときではすみませんっ。

 貴方を今、殺したい理由が、ご先祖さまでも七代目の祟りでもないからですっ」

 私は私の意志で、貴方を殺しに来ましたっ、と夏菜は宣言する。

「夕べ、寝られなかったんですっ!

 ――あなたのことばかり思い出して!」

「……恋ですね」
と指月がぼそりと後ろで言った。

「勝手にキスとかされたからですっ!」

「……恋ですかね?」
と有生の側で書類を手に上林がちょっと照れたように言ってくる。