「……5、……4、……3、

   ……2、……1、」

 ゼロ! という声とともに、あちこちでおめでとうございます、と声が上がりはじめた。

「あけましておめでとう」

「……おめでとうございます」

 近くの寺からまだ除夜の鐘が聞こえていた。

 冷たい大気を震わせて、鐘が低く鳴り響く中、有生と見つめ合ったが、一瞬のことだった。

 いきなり列が動き出したからだ。

 出遅れた夏菜は有生に手をつかまれたまま、別の流れに乗ってしまう。

「こらっ、持ってかれるなっ、夏菜っ。
 おのれを強く持てっ!」

 能力開発セミナーか、というようなことを叫ばれながら、なんとなく引き戻されて、一緒にお参りをした。