灯籠の灯りに照らし出された神社の石段には、みっしり人がいて動かない。

 そして、そうかと思えば、急に動き出したりして怖い。

 大晦日、夏菜たちはこの石段で新年のカウントダウンを迎えようとしていた。

 暗い色のコートを着たお雛様がみっしり並んでいるみたいな石段で、有生がぼそりと呟く。

「俺ひとりなら、こんなとこ来ないんだがな」

「え?
 でも、社長が……

 有生さんが来たいって言ったんですよ」
と有生を見上げて夏菜が言うと、

「そうなんだが。
 寒いし、全然動かないし。

 やっぱり、来るんじゃなかったなと思っているところだ」
と前の人たちの後ろ頭を見ながら有生は言ってくる。

「帰りましょうか?」

 白い息を吐きながら、そう夏菜は訊いてみた。

「まあ、せっかく来たんだしな。
 俺は初詣なんていつも適当だったが。

 来年はお前と結婚する年だ。
 心新たに迎えようと思って来てみたんだ。

 だが、お前が疲れたのなら帰るぞ」

 ……な、なんかありがとうございます、と赤くなりながら、夏菜は、
「いえ。
 せっかくですので、お参りしましょうっ」
と言ってみた。

 かなり寒いが……。