その頃、地獄のうさぎは茂みの陰に隠れていた。
なんとか山の中腹を超えたけど、そろそろ奴らが来るに違いない、と思いながら。
いつでも簡単にやれる自分など、猛者たちの眼中にはないらしく、誰も本気で追いかけては来ないので、此処まで来られたが。
有生と指月を出し抜いて山を抜けられるとは思っていなかった。
うーん。
何処かに潜んでいて、ぽこりと背後からやるか。
隙をついて駆け抜け、夏菜さんのところまで一気に行くか、と策略を巡らせながら、膝を抱えていたとき、いきなり後ろから声がした。
「ほう。
こんなところにうさぎが……」
作り物のはずの耳がピンと立ちそうなくらいビクついて振り返る。
しゃがんでいるせいで、余計巨大に見える有生が背後に立っていた。
底冷えのする目でこちらを見下ろすその手には斧があった。
森に落ちていたのを拾ったのだろうか。



