今夜、あなたに復讐します

 いや、歴戦の勇者みたいなガタイのいいOBの方々はほとんど既婚者なので、別に私はいらないでしょうけどね、と苦笑いして夏菜は見ていた。

 有生もなにか違うことが引っかかっているようで、頼久を見ている。

 その意図がわかっているらしい頼久は、有生を見てもう一度言った。

「夏菜と道場をくれてやろう」

「道場はいりません」

「くれてやろう」

「いりません」

 戦いが始まる前に、別のところで争いが勃発するところだった。

 が、加藤が割って入り、
「では、皆様、スタートの位置に並んでください」
と話を終わらせる。

「山を越え、街にたどり着いたら、此処まで戻ってきてください。
 ……ゴールは夏菜様です」
と加藤が笑う。

 おおーっという地鳴りのような歓声のあと、頼久が、
「では皆の者、出発するがいい!」
と宣言した。

 一斉に庭から人が消える。

 あとに残った兄、耕史郎(こうしろう)が、
「いやあ、誰が俺の弟になるのか楽しみだな~」
と笑い、菜々子が溜息をつきながら、はいはい、と言っていた。