今夜、あなたに復讐します

 有生を押し返そうとしている右手を、有生が強くつかんできた。

 夏菜の目を見つめ、静かに言ってくる。

「……戦え」

 いや、なにとですか……と思っていると、

「男に迫られると、反射的に技を繰り出して、男を投げ飛ばそうとする自分とだよ」
と有生が言う。

 でっ、でもですねっ。
 こちらにも断る権利ってあると思うんですよねっ。

 ライオンの前の仔ねずみのように、震えながらも夏菜はそう思っていた。

 だが、緊張のあまり、言葉が出ない。

 上に乗られて有生の重みと体温を直《じか》に感じているせいだ。

 寝技の練習以外で、こんなに男の人と近づいたことはない。

「俺が嫌いか?」
と有生が囁いてくる。

 そ、そう真っ直ぐ訊かれると困りますね。

 逃げ場がないではないですか。

 せめて、視線をそらしてください……とおのれの視線を泳がせてみたが、有生の視線が追いかけてくる。