「いやいや、俺はお兄さんは大人気作家になってくれると信じているぞ」
と自分のフロアで降りた有生は言い出した。
耕史郎よりも有生の方が、耕史郎の明るい未来を信じているようだった。
だから、あんなにズバッと新刊の話を訊けたのだろう。
「……えーと。
ありがとうございます」
すみません。
私は信じ切れてないです、と夏菜は思う。
兄をよく知るだけに不安でいっぱいだったが、とりあえず、礼は言ってみた。
「うん。
俺は信じているぞ。
お兄さんの本が七代目を継がなくてもいいくらいに売れることを」
そ、そうなんですか……?
と思う夏菜の前で、有生がドアを開ける。



