マンションの下に着いたとき、夏菜たちは兄と出会った。
なんとなく一緒にエレベーターに乗りながら、夏菜は兄、耕史郎となにを話したものかなと迷う。
離れて長いし、仕事は上手くいってないみたいだし。
この間は勢いでしゃべれたけど、こうして改まると、ちょっと話題に困るな、と思っていると、有生が、
「この間はありがとうございました」
と耕史郎と話し出してくれたので、ホッとした。
「そういえば、お兄さんの本、全部読んでしまったんですけど。
新刊はいつ?」
と有生が言うと、耕史郎は複雑そうな顔をしていた。
全部読んだと言われて嬉しいが。
新刊の話はされたくないようだった。
「まあ……、そのうちいつか」
と最近出会えていない遠方の人に、年賀状で、またいつかお会いできるといいですね、と書いてしまうときのような、ふんわりとしたことを耕史郎は言ってきた。



